お知らせ

産業医通信 2022年5月号

毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします。

Contents

睡眠不足がもたらす脳への影響

風疹について

職場の喫煙対策

国内最大級の感染症・ウイルス性肝炎について

 

睡眠不足がもたらす脳への影響

誰でも睡眠時間が足りないと頭がぼんやりしたり、集中力が落ちて仕事がはかどらないといった経験をされたことがあるかと思います。
睡眠時間を普段の半分に減らした状態を1 週間続けると、丸1 日徹夜したときと同じレベルに脳機能(作業能力)が低下すると言われています。また普段よりも2 時間睡眠時間を減らした翌日は、ビールをコップ1 杯飲んだ時とほぼ等しい影響を脳機能に及ぼすという報告もあります。
睡眠は記憶や学習を定着させる働きもあり、人は浅い睡眠(レム睡眠)中に、昼間に得た情報を整理して大脳皮質に記憶させます。しかし睡眠が不足すると、生命維持のために大切な深い睡眠(ノンレム睡眠)が優先されるため、レム睡眠が減って情報整理や記憶の働きが低下します。大切な試験前は徹夜で知識を詰め込むということをしがちですが、記憶の面では効果的ではないのです。
このように睡眠不足が脳へ与える影響は大きく、仕事でも勉強でも自分の能力をフルに発揮させるためにはしっかりと睡眠時間を確保することが重要です。

赤澤Dr.

 

風疹について

風疹は三日はしかともよばれ、飛沫感染するウイルス性発疹症です。感染力が強く、高熱とリンパの腫れ、発疹が特徴です。成人での初感染はより重い症状になる傾向があります。
最も恐ろしいのは風疹に対する十分な免疫がない妊娠20 週までの妊婦が感染した場合、生まれてくる子どもに難聴や白内障、心疾患などの障害を起こす先天性風疹症候群を起こすことです。
「鏡は横にひび割れて」というアガサ・クリスティーの小説をご存知でしょうか。
これは先天性風疹症候群をテーマにした作品です。発熱があるのに好きな女優の握手会に参加した、しかもそれを自慢げに話した、というコロナ禍以前にはよくありえたエピソードに鍵があるお話です。
予防接種により激減したのですが、本邦では昭和37 年度から平成元年度に生まれた女性と、昭和54 年度から平成元年度に生まれた男性は予防接種を受けていて1 回、それ以前の方は受けていないため十分な免疫がなく、これら世代で流行が起きました。そしてその際に先天性風疹症候群を発症する子どもが増加しました。
抗体価を測定するクーポンが配られ、健診の際に検査を行ったりしているのはこのためです。
予防接種は自分だけのためではない、ということを忘れないでください。

宮田Dr.

 

職場の喫煙対策

たばこは吸っている人だけではなく周囲の人々の健康にも悪影響を及ぼします。がんや虚血性心疾患、脳卒中など、命に関わる重大な病気の原因にもなります。
2020 年4 月よりオフィス、事業所など多くの人が利用する施設は専用の喫煙室以外は屋内禁煙となりました。職場の喫煙対策は、労働衛生管理の一貫として組織的に取り組む必要があります。経営者は喫煙対策の推進のために率先して行動し、その指導の下に衛生委員会などにおいて推進計画を検討・策定します。
喫煙場所については、専用の喫煙室を設置し、煙を屋外に排出する機器(換気扇など)を設置しなければなりません。喫煙室の出入り口へ標識の掲示が義務づけられました。企業によっては全面禁煙とすることもあります。
まずは社内にどれだけの喫煙者がいるかの現状把握を行い、喫煙による業務や職場環境への影響について従業員がどのように捉えているか、アンケートなどを通じて把握する必要があります。
なぜ企業として喫煙対策を進めるのか、受動喫煙が周囲に与える悪影響について、従業員へ勉強会などを実施して、周囲の人の健康に配慮した対応が喫煙者には求められることを自覚してもらうことも必要です。

鈴村Dr.

 

国内最大級の感染症・ウイルス性肝炎について

昨今コロナウイルス感染症が世間的にも耳目を集めておりますが、一方で我が国では以前より国内最大級の感染症として取り扱われていたのがウイルス性肝炎です。
肝臓という臓器はそもそも「沈黙の臓器」と呼ばれるほどであり、7 割程度肝臓が障害されないと自覚症状が出てこず、症状が出たときには既に進行していることが多々あります。そのため早期発見のため積極的、自発的に検査を行うことが重要となります。
特に慢性的な肝炎を引き起こす原因となるのがB 型・C 型肝炎ウイルスです。
これらのウイルスは血液や体液を体に取り込むことで感染します。
通常の職場では職域内で感染することはありません。
主な経路としては性的接触や入れ墨、カミソリや歯ブラシの共用、注射針の回しうち、輸血、血液製剤などが挙げられます。
健康診断で肝臓に異常があると指摘された方や過去に輸血や血液製剤を使った経験がある方は一度検査を近医にてご相談いただくことが望ましいでしょう。
早期発見・早期治療により肝硬変や肝がんへの進行を防ぐことができます。

古谷Dr.