産業医通信 2022年12月号
毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします。
Contents
●逆流性食道炎について
●運動の健康効果とやる気を出すコツ
●健康診断で見るべきポイント
●適正飲酒について
逆流性食道炎について
逆流性食道炎とは、胃の内容物(主に胃酸)が食道に逆流することにより、食道に炎症を起こす病気です。原因は、食道と胃のつなぎ目に下部食道括約筋という筋肉が緩むと胃から食道への逆流が起こるようになるもので、具体的には、胃内圧の上昇(食べ過ぎ、早食いなど)、腹圧の上昇(肥満、衣服による締め付けなど)、高脂肪食などにより生じますが、先天性または加齢によって下部食道括約筋が緩む食道裂孔ヘルニアがある場合も大きな原因の一つとなります。症状としては、胸が焼ける感じ、酸っぱいものが上がってくる、食後の胸痛などがあげられます。のどの違和感、声のかすれ、慢性の咳などを伴うこともあります。
診断は、上部消化管内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)による、食道粘膜の炎症所見や下部食道括約筋の緩みの状態の観察などにより行われます。
治療は、胃酸を抑える薬(主にプロトンポンプ阻害薬)の内服が行われますが、強い食道裂孔ヘルニアの存在など、原因によっては手術が必要な場合もあります。また、原因となっている可能性のある生活習慣の改善も大切で、食べ過ぎ、早食い、高脂肪食、アルコール、炭酸飲料、喫煙などをできるだけ控え、食後2~3時間は横にならないようにしましょう。また、腹圧の上昇をきたすような長時間の前屈みの姿勢を避け、おなかをベルトや服で締め付けすぎないようにしましょう。肥満も要注意です。
本行Dr.
運動の健康効果とやる気を出すコツ
日本では運動不足が、喫煙・高血圧についで第3位の危険因子であり、毎年5万人ほどの死亡(主に循環器疾患で、一部ガン)に寄与しているというデータがあります。また運動は仕事のストレスが高い人の抑うつ傾向になる人を半分に減らすというデータもあります。
運動はやる気がなかなか出ませんが、「やる気を出すコツ」はあります。「やる気を出すコツ」は「とりあえずやること」です。これは「作業興奮」と言われており、やり始めることでやる気が徐々に出てくるということです。ポイントは、「ラクにできること」を「とりあえずやる」ことです。散歩やジョギングの場合は、ゆっくり数分で良いです(着替えるだけでもOK)。意外とやり始めるとやる気が出てきて5分、10分とできます(もちろん数分でも構いません)。筋トレの場合には、最初から腕立て伏せや腹筋運動はせず、軽めのスクワットや足踏み10回からやりましょう。とにかくラクにできることから始めて、やる気が出てくるのを待ちましょう。
ぜひこの「作業興奮の原理」を使って、運動を習慣にしてください。運動だけでなく仕事や勉強や家事等にも応用してみても良いでしょう。
山本Dr.
健康診断で見るべきポイント
健康診断は今の健康状態を知れる手段の一つです。過去のデータと比較し、健康状態を確認したり生活習慣を見直すチャンスです。
結果の欄に再検査と書かれていたら必ず放置せず医療機関へ受診してください。
健康診断では数値の異常はわかりますが、どういった病気が隠れているかを診断できるわけではありません。
また産業医の視点として、健康診断の結果によっては働く環境が安全で健康的か確認するために面談をしたり就業判定が必要な既往歴、通院歴や悪い数値がないかを確認します。少し例を挙げると、高血圧を健康診断のときに指摘された方は毎朝起床して排尿後、朝食前に血圧測定を行う習慣を持ってください。また血糖値の指標として知られているHbA1cが5.6%以上の人は食後高血糖が隠れていることが多いので炭水化物の摂りすぎを見直してください。
まだ大丈夫と思わず、そろそろ…の考えで将来が変わります。チャンスを逃さないでください。
竹中Dr.
適正飲酒について
お酒を正しく飲むことは、心豊かで楽しい人生をおくることにもつながります。
しかしながら、ある一定量を超える飲酒は肝硬変だけでなく、脳梗塞、心筋梗塞、高脂血症、高血圧、乳がん、糖尿病などのリスクを高めることがわかっています。
健康で豊かな人生を送るために、平均的な日本人の場合、アルコールの摂取量は1日20g以下とすることが推奨されます。(女性やお酒に弱い人、高齢者などはもっと少ない量)。20gとは大体「ビール500mL 1缶」「日本酒1合」「チューハイ(7%)350mL缶1本」「ウィスキーダブル1杯」などに相当します。健康を守るための≪12のルール≫をまもり、お酒と上手に付き合っていきましょう。
≪12のルール≫
①飲酒は1日平均2ドリンク(=20g)以下
②女性・高齢者は少なめに
③赤型体質(飲酒後に真っ赤になる人)も少なめに
④たまに飲んでも大酒しない
⑤食事と一緒にゆっくりと
⑥寝酒は極力控えよう
⑦週に2日は休肝日(肝臓を休めるために設ける飲酒しない日)
⑧薬の治療中はノーアルコール
⑨入浴・運動・仕事前はノーアルコール
⑩妊娠・授乳中はノーアルコール
⑪依存症者は生涯断酒
⑫定期的に検診を
橋本Dr.