産業医通信 2023年1月号
毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします。
Contents
●窒息事故に注意しましょう
●睡眠負債と解消法
●ヒヤリハットを活かして安全な環境づくりを
●日常にひそむ骨粗鬆症の危険因子
窒息事故に注意しましょう
毎年1 月には、餅をのどに詰まらせる高齢者の事故が多く発生します。
厚労省の調査によると、食物が原因となった窒息による65歳以上の高齢者の死亡者数は、年間3,500人以上にのぼります。
高齢になると噛む力や飲み込む力が低下するため、餅は食べやすい大きさに小さく切る、お茶や汁物でのどを潤してから食べる、ゆっくりとよく噛んでから飲み込む、などの工夫が必要です。また高齢者が餅を食べる際は周りの方が食事の様子に十分注意を払い見守りましょう。
餅以外の窒息事故の原因となる食品は、ミニカップゼリー、飴、パン、肉、魚介、果実、米飯など多岐にわたります。ミニトマトやパンによる子供の窒息事故も多くみられますので、保護者がリスクを十分に認識しておくことが大切です。
万が一食べ物がのどに詰まったときの応急手当には、腹部突き上げ法と背部殴打法があります。
日本医師会「救急蘇生法:気道異物除去の手順」(https://www.med.or.jp/99/kido.html)に具体的な方法の記載がありますので、確認しておかれると良いでしょう。
赤澤Dr.
睡眠負債と解消法
睡眠負債という言葉をご存知でしょうか。
日々の睡眠時間の不足が借金のように積み重なり、抑うつや集中力の低下を招き、長期間続くと高血圧や不整脈、肥満や糖尿病の原因にもなります。
理想的には毎日8時間の睡眠が必要ですが、本邦でも労働者は6時間程度であることが多いです。
休日にまとめて寝る、一日中寝るといった方法をとる人も多いですが、これは効果的ではありません。
一日長時間の勤務があった後などは仮眠をとり、さらに9時間睡眠を三日ほど続けることで解消されますが、蓄積した睡眠負債の解消にはリラックスできる環境で足を延ばして質の良い睡眠を毎日とることが必要です。
繁忙期などで睡眠不足の期間があった後にはまとまった休みを取る、時間外労働をしないなどして十分な休養をとるように心がけましょう。
宮田Dr.
ヒヤリハットを活かして安全な環境づくりを
ヒヤリハットとは、重大な災害や事故までは至らないけれど、それに直結してもおかしくないような出来事のことです。ヒヤリハットが起こるのは、製造業や建設業、運輸業、医療だけではなく、オフィスなどでも起こっています。
労働災害における経験則の一つである「ハインリッヒの法則」は、重大な事故が発生する背後には、29件の軽微な事故があり、さらにその背景には300件のヒヤリハットがあるという内容です。
ハインリッヒの法則を踏まえると、日頃からヒヤリハットの発生情報を把握して、再発防止のための対策を講じることが、重大な事故の発生防止につながります。軽微なミスだからといって報告しないことが一番危険で、小さなヒヤリハットこそ報告して原因と対策を考えることが重要です。
ヒヤリハット報告の注意点としては、客観的かつ具体的に書くこと、対策を考えるときに報告者を責めないこと、ヒヤリハット報告が出されたら朝礼や社内報で社内に周知する、衛生委員会などで話し合いの場を設けることは同様の事例の発生を防ぐための注意喚起に役立ちます。
鈴村Dr.
日常にひそむ骨粗鬆症の危険因子
我が国は世界でも有数の長寿国ですが、年齢を重ねるにつれ骨や筋肉は衰える傾向にあり、 介護が必要になる状況も少なくありません。要介護になりやすい状態のことを近年ではロコモティブシンドロームと呼び、骨粗鬆症はその一因とされています。
骨粗鬆症は骨の代謝のバランスが崩れ、骨が脆くなってしまう疾患です。ふとした際に転倒し骨折、そのまま寝たきりの状態になることも珍しくありません。
一般的には骨粗鬆症は女性の方がなりやすい疾患といわれますが、男性も決して他人事ではありません。遺伝的な要素の他にも日常的な要素が関与しています。
予防できるものの代表例が喫煙・アルコール多量摂取・運動不足・カルシウム摂取不足です。特に喫煙・アルコール・運動不足に関しては血圧やコレステロールなどとも共通している事項です。一度生活習慣を見直していただければ幸いです。
カルシウムを多く含む食品は牛乳・豆類・緑黄色野菜・魚介や海藻類になります。またカルシウムの吸収を助けるビタミンD は鮭やキクラゲ、干し椎茸に豊富に含まれます。
反対に塩分を多く含むものは、カルシウムを体外に排出しますのでご注意ください。
古谷Dr.