お知らせ

産業医通信 2023年3月号

毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします。

Contents

春の「変化」に伴う心身の不調
更年期障害について
脳血管疾患のリスクについて
特殊健康診断とは

 

春の「変化」に伴う心身の不調

春は就職や昇進、異動、新しい人間関係、子供の卒業・入学、引越など、社会生活と家庭生活の両面で大きな変化が起こりやすい季節です。こういった身の回りの変化が生じると、人の心と体は新しい状況に馴染もうと無意識のうちに努力しますが、変化が大きすぎると適応しきれずに、体のだるさや集中力の低下、不眠等の不調が現われることがあります。これらは様々な環境変化(=ストレス)によって自律神経系のバランスが崩れ、心身の疲労として出現する症状と考えられます。
新しい刺激を多く受ける春は、自律神経の中でも心身を緊張・興奮モードに持っていく交感神経が活発になりやすく、心の疲れと共に血圧上昇や胃腸機能の低下など体の不調ももたらします。そういう時期は、逆に体の緊張を緩和する役割がある副交感神経を活性化させると、自律神経系のバランスがとれ体調を整えることができます。具体的には、予定に追われないのんびりした時間を意識して持つ、新たな変化を起こさない 禁煙、新しい趣味、ダイエットなどをこの時期に始めない)、普段より多めに睡眠をとる、などです。春の変化に馴染めず心身が悲鳴を上げ そうな時は、これらを実践してみて下さい。

赤澤Dr.

 

更年期障害について

閉経前5年から閉経後5年の計10年間を更年期といいます。この期間に女性ホルモンのエストロゲン濃度が大きく変動しながら低下していくことにより起きる様々な症状を更年期障害といいます。ホットフラッシュやのぼせ、ほてりのような血管の拡張、放熱による症状は有名ですが、頭痛などの身体症状や抑うつのような精神症状も出現します。
更年期障害はその後、エストロゲンの分泌が落ち着くので改善していきます。
男性も加齢に伴い男性ホルモンのテストステロンが低下するため、男性更年期障害加齢性性腺機能低下症 と呼ばれるものがあります。女性同様症状は様々で、筋肉痛や関節痛などの痛みを感じやすくなるといったものから抑うつや認知機能の低下まであります。女性と違う点として終わりがなく、糖尿病や肥満、心血管疾患にも関係しているといわれています。
大切なこととして、様々な症状があるため、他の疾患が隠れていることがあります。更年期だから仕方ないと放置せず、しっかりと鑑別して適切な治療をすることが大切です。

宮田Dr.

 

脳血管疾患のリスクについて

脳血管疾患とは、脳血管のトラブルにより脳細胞が破壊される病気の総称です。主な脳血管疾患には血管が破れて出血することによる脳出血、くも膜下出血と血管が閉塞して酸素不足となる脳梗塞、一過性脳虚血発作があります。
脳血管疾患は突然死を招くほかに、一命をとりとめても何らかの後遺症を残す人が多いことです。後遺症の程度によっては寝たきりになったり、介護が必要になったりすることがあります。
脳血管疾患の危険因子としては、高血圧、動脈硬化、喫煙が最大の危険因子です。
その他にも、多量の飲酒、運動不足、ストレス、睡眠不足などの生活習慣が脳血管疾患の引き金になります。またメタボリックシンドロームと言われる、内臓脂肪型肥満に加えて、高血圧、高血糖、脂質異常のうち2つ以上を併せ持った状態では、動脈硬化をより悪化させ、脳血管疾患の発症リスクを高めることが分かっています。
脳血管疾患の予防のためには、まず健診の結果から、危険因子があれば直ちに生活習慣を見直し、改善に努めましょう。また健診で高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈を指摘されている人は、医療機関を受診して治療することも大切です。

鈴村Dr.

 

特殊健康診断とは

一定の有害な業務に従事する方に対し、医師による特別の項目について健康診断(特殊健康診断)を実施しなければならないと労働安全衛生法にて規定されております。

特殊健康診断を実施が必須の業務は次の7つです。
(1)高気圧業務
(2)放射線業務
(3)特定化学物質業務
(4)石綿業務
(5)鉛業務
(6)四アルキル鉛業務
(7)有機溶剤業務

これらの中で一定の特定化学物質や石綿業務については、それらの業務に従事しなくなった場合も実施する必要があります。また常時粉じん作業に従事する方に対してはじん肺法に基づくじん肺健康診断を定期的に実施しなければなりません。このほか、VDT作業や振動業務などにおいては、特殊健康診断の実施が勧奨されています。これら健康診断の結果によっては、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などの措置や、作業環境測定の実施、施設または設備の設置または改善などの措置を行わなければなりません。
これらの記録を作成し、5年間もしくは30年間(業務の内容によって異なります)保存する必要もありますのでご注意ください。

古谷Dr.