産業医通信 2023年4月号
毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします。
Contents
●新型コロナウイルス感染症
●緑内障の早期発見のために眼科検診を受けましょう
●ヘルメット着用の努力義務化について
●蕁麻疹について
新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルス感染症が、感染症法上現在の2類相当から2023年5月8日より5類へと変更になります。それに伴い下記のような方針が示されました。
<感染予防、感染防止対策>
①基本的感染防止策:
1)マスクの着用:着用は個人の判断。一定の場合にはマスク着用を奨励。
2)手洗い等手指衛生・換気:一律には求められないが、基本的感染対策としては有効。
3)三密回避・距離:一律には求められないが、高齢者等ハイリスクの人は三密回避、近接した会話を避ける、あるいはマスクの着用などが有効。
4)アクリル板の設置や入場時の検温、入り口の消毒薬設置など:一律には求められず、状況や対費用効果を検案して自主的に決定する。
②コロナ検査:検査キットは自己負担に。高齢者施設等は都道府県の負担で行うことに。
③ワクチン接種:2023年中は無料。高齢者や医療従事者等は2023年5月から年2回、その他は2023年9月以後に1回。
<感染した場合の対応>
①隔離・入院:感染患者の外出自粛は求められない。強制的な入院措置もない。
②受診医療機関:これまでの発熱外来を行っている医療機関(4.2万)だけでなく、インフルエンザ診療を行ったことのある医療機関すべて(6.4万)に感染予防対策を取った上での診療を求める。
③医療費:原則自己負担。ただし高額医療費制度や種々の一部公費負担制度が残される。
移行期間が設けられ、当面自治体単位で相談窓口が残される予定のため、わからないことは相談窓口やかかりつけ医に相談しましょう。
橋本Dr.
緑内障の早期発見のために眼科検診を受けましょう
緑内障は、さまざまな原因によって視神経が障害され、視野が欠けていく病気です。眼圧の上昇が主な原因とされていますが、近年では眼圧が正常でありながら、視神経が元々弱いために緑内障になる「正常眼圧緑内障」が日本で多いことがわかっています。遺伝、近視も原因となります。強い近視がある、両親や兄弟に緑内障の方がいる場合には、リスクが高いということになります。
緑内障は非常に多い病気で、40歳以上で20人に1人、60歳以上では10人に1人以上の患者がおり、日本の失明原因1位となっています。しかし失明率自体が高い訳ではなく、早期に発見して治療を受ければ、生涯視野と視力を保てる病気です。緑内障の診断には、眼圧検査、眼底検査、視野検査などが必要です。
初期に自覚症状がほとんどない緑内障では、病気の早期発見のために検査がとても重要です。また、病気の進行や治療の効果を確認するためにも、定期的な検査が必要になります。眼圧を下げることにより、緑内障が進行しにくくなりますので、できるだけ早期に緑内障を発見し、眼科で処方される点眼薬などにより眼圧を下げ続けることが大切です。
緑内障の早期発見のためにも、40歳を過ぎたら定期的な目の検診をお勧めします。
山本Dr.
ヘルメット着用の努力義務化について
改正道路交通法の施行により2023年4月1日から自転車に乗るすべての人がヘルメットをかぶることを努めなければならないのはもちろんのこと、同乗する方にもヘルメットをかぶらせるように努めなければならないようになりました。
罰則はないものの、自転車事故で死亡した人の約7割が頭部に致命傷を負っており、ヘルメットをかぶらないことで致死率が2.3倍高くなることが分かっています。
命を守るためには自転車用ヘルメットを着用し、頭部を守ることが大切です。企業において、通勤やシェアサイクルなどで自転車の利用を認めている場合も対象になるため、一度、企業における自転車利用についての安全管理について検討してみてください。
竹中Dr.
蕁麻疹について
蕁麻疹は突然、皮膚に激しいかゆみを伴う発疹が現れる病気です。発疹は体のどこにでも現れ、広い範囲におよぶこともあります。通常、発疹は短期間で消えてしまうのが特徴で、約9割は1週間以内に治まりますが、慢性化して数か月、数年と長く続く場合もあります。
蕁麻疹の原因を特定できるのは全体の約3割弱で、皮膚のこすれや寒冷・日光などの物理性の刺激によるもの、入浴や運動時の発汗によるもの、特定の食品や薬などによるアレルギー、そのほか青魚、豚肉、たけのこなどを食べたときに一時的に起こるじんましんなどがあります。残りの約7割は原因不明と言われています。
蕁麻疹発生のメカニズムは、皮膚に存在する肥満細胞に外から何らかの刺激が加わると、中からヒスタミンが放出され、そのヒスタミンの作用で、血管が膨れ血液の成分(血漿)が血管の外に出ていき、これにより、皮膚が膨らみ、赤みが生じ、また、ヒスタミンは神経にも働きかけ、知覚神経が刺激され、痒みがでてきます。
蕁麻疹の治療は、原因がわかっている場合は、その原因を取り除き、避けます。そして、原因が特定できなかったり、特定できても避けきれない場合は、抗ヒスタミン薬の服用が治療の基本になります。
本行Dr.