産業医通信 2023年12月号

  • 2023年12月5日

毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします

Contents

●仕事と介護の両立支援について
●年末年始を安全に過ごしましょう
●感染性胃腸炎
●低温熱傷とは

仕事と介護の両立支援について

近年、働きながら家族の介護を行なう、いわゆる「ビジネスケアラー」が急増し、2030年には働く人の4割318万人となり、経済損失は9兆円に上ると予測されています。
そこで、できる限り介護離職を防ぎ、仕事と介護を無理なく両立させるため、下記のような支援施策が行なわれています。
①介護休暇:家族の介護のため突発的な休みが必要な場合などに取る休暇。
 介護対象1人に対して年間5日まで。
②介護休業:家族の介護に関して、手続きや住居の改修、受け入れ施設探しなど介護の準備のために継続的に休む必要がある場合に取得する休業。年間93日まで。要件がそろえば介護給付金を申請できる。
③介護給付金:介護休業を取得した際に、要件がそろえば給与の63%まで支給される。
④両立支援助成金:介護離職の予防のため、会社が種々の制度を作る取り組みに対して、国から助成金が出る制度。
※家族:本人の父母や祖父母、兄弟姉妹、事実婚を含む配偶者とその父母、子や孫。
※雇用形態に関係なく日雇い以外の全労働者が対象(ただし労使協定等により制限される場合もある)。
介護は自分一人で行なうものではなく、上記の様な制度や、社会的資源を十分に活用することが個人にも社会にも大切です。そのためには、介護が必要になってから慌てるのではなく、早めに地域の包括支援センターや市町村の介護相談窓口などに相談を始めることが重要です。

橋本Dr.

年末年始を安全に過ごしましょう

年末年始には、この時期に特有の事故が発生することがあります。以下の点に注意して、年末年始を安全に過ごしましょう。
①餅による窒息事故を防ぎましょう!毎年お正月に事故が多発しています(年間の窒息死亡事故の43%が1月に発生)。
 ⃝餅は、ご飯と比べると、なんと100倍もの窒息のリスクがあります。
 ⃝窒息誤飲は生命の危険が高い(救急車を待っていては助からない可能性が高い)ので、高齢者や乳幼児の場合は、食べることそのものを避けることも考えても良いでしょう。
 ⃝食べる際には、水分で口腔内を潤し、食べやすい大きさにしたうえで、急いで飲み込まず、口の中でよく噛んで食べましょう。
②大掃除中の転落・誤飲等の事故を防ぎましょう!
 ⃝脚立等は安定した場所に設置し、正しく使用するとともに、バランスの悪い場所などでの掃除では無理をしないようにしましょう。 ⃝洗剤などの取扱説明、注意表示をよく確認し、正しく使用しましょう。
 ⃝掃除中も子どもの手の届くところに誤飲すると危険なものを置かないようにしましょう。
③帰省先等のストーブ等による子どものやけど事故を防ぎましょう!
 ⃝帰省先等で使用しているストーブなどの危険性をよく認識し、子どもが近づいたり、触ったりしないように注意しましょう。

山本Dr.

感染性胃腸炎

感染性胃腸炎とは、なんらかの病原体への感染による胃腸炎の総称です。食中毒もその一部です。
突然の嘔吐・下痢・腹痛や発熱などの症状を起こします。秋から冬の時期はノロウイルス、ロタウイルス、夏の時期は腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、カンピロバクターなどが主な原因となって流行します。
【予防のポイント】食事や調理の前、トイレの後、下痢などの患者の汚物処理を行った後はしっかり手洗いをしましょう。常に爪を短く切って、指輪などをはずし、石けんを十分泡立てます。すすぎは温水で十分に行い、清潔なタオルまたはペーパータオルで拭きます。
患者の便や吐物の処理を行う場合は換気を十分に行い、使い捨て手袋やマスク、エプロンを着用した状態で病原体が舞い上がらないように静かに拭き取るようにしましょう。特にウイルスが原因の場合はアルコールではあまり効き目がないため、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)や亜塩素酸水(遊離塩素濃度25ppm)で浸すように拭きましょう。
その他、生の肉や魚、二枚貝などの生鮮食品はよく加熱してから食べるのが安全です。また、食品は長時間室温で放置せず、冷蔵庫で保管し早めに食べるようにしましょう。

鹿島Dr.

低温熱傷とは

寒い季節に、使い捨てカイロや電気こたつなどが体の同じ部位に触れ続けると、痛みを伴わず気付かないうちにやけどが進行してしまうことがあります。これが「低温熱傷」で、44℃~50℃のものに触れ続けると、自覚症状のないまま皮膚の奥をじわじわと傷めていくことで起こるやけどですが、軽傷に見えても重症化する場合もあるので要注意です。
その起こりやすさは個人差があり、同じ人でも体の部位によっても違いがあります。子どもや高齢者など(皮膚が薄く、皮膚感覚が弱い)、末梢神経障害や麻痺がある場合や飲酒などで皮膚感覚が鈍麻している場合に気づかないうちに進行しやすく、同じ人でも圧迫部位などの血流が悪いところに起こりやすくなります。
低温熱傷が起きた場合、その程度は自己判断しにくいので、放置せずに(水泡がある場合は潰さずにそのまま)皮膚科を受診してください。放置して症状が進行すると、長期間の治療が必要になる可能性があります。
低温やけどを防ぐには、①直接、皮膚に暖房器具を当てない、②長時間、同じ部位に暖房器具を当てない、③少しでも熱さを感じたら、その時点で暖房器具から離れる、④睡眠時はできる限り暖房器具を使用しない(特に危険なのは、暖房器具に触れたまま眠ることで、どうしても使用する場合は接触温度を30℃以下にしましょう)など必要で、傷跡も残りやすいので十分注意しましょう。

本行Dr.

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