産業医通信 2024年3月号
- 2024年3月4日
毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします
Contents
●大人の喘息
●副鼻腔炎について
●障害者雇用と支援について
●傾聴とは
大人の喘息
喘息には小児期に発症するもの、成人後から症状が出現するものがあります。日本での喘息症状をもつ成人の方は全体の6~10%と推定されております。
原因により、喘息はアレルギー性のものと非アレルギー性のものに分類され、成人後からは非アレルギー性のものが多いとされています。非アレルギー性喘息は特定の感染症、 大気中の化学物質、タバコの煙、呼吸器の問題、気温の変化、ストレス、運動などが原因となる場合があり、専門医による慎重な診断が要されます。
喘息の症状自体は小児と成人で大きな違いはなく、ヒューヒュー・ゼーゼーという喘鳴と息苦しさが主です。非アレルギー性喘息は季節性がなく、通年で症状が出現するのも特徴です。
上記のような症状や特徴に思い当たる場合は、お近くの呼吸器内科にご相談いただけますと幸いです。また職場で有機溶剤やその他化学物質を取り扱っている場合は、そのことも必ず主治医にお伝えいただけますようお願い申し上げます。
古谷Dr.
副鼻腔炎について
副鼻腔は鼻の周囲の骨にある空洞です。この部分に炎症が起きることを副鼻腔炎といいます。症状には鼻から膿が出る頭痛、顔面の痛み、口臭などがあります。
急性副鼻腔炎では感染やアレルギーにより粘膜が腫れることで副鼻腔の開口部が閉塞し、副鼻腔内の空気が血液に吸収されて圧が低下し痛みを起こします。またこの部位に細菌が繁殖することでさらに悪化します。
慢性副鼻腔炎は環境中の刺激物への暴露、アレルギー、鼻茸、遺伝などが要因と言われています。細菌感染が広がり、目の周りや眼球、まれに脳へ達することもありますので油断はできません。鼻閉改善薬やステロイドの噴霧、加熱などで排膿を促すほか、繰り返す場合には手術することもあります。
鼻詰まりがひどい、臭いがひどい、頭痛や顔の痛みがつらい時は耳鼻科に受診しましょう。
宮田Dr.
障害者雇用と支援について
障害者雇用とは、障害者の能力や特性に応じた働き方ができるように事業主が雇用する制度です。
障害者雇用の促進と安定のために障害者雇用促進法が制定されており、従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める障害者の割合を法定雇用率以上とする義務があります。
法定雇用率は数年ごとに引き上げられ、民間企業の法定雇用率は2023年度2.3%で据え置き、2024年度2.5%、2026年度2.7%の予定です。
今年において従業員数40人の事業所で週の所定労働時間が20時間以上の障害者1人の雇用が義務付けられます。
また法定雇用率に関しては障害の特性によりますが、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の短時間労働者を雇用率に算定可能となる変更もありますので、今後の障害者雇用促進法の改正にもご注意ください。
事業主には募集、採用、賃金、福利厚生などでの差別禁止や障害者の特性に配慮した事業所内の環境整備などの措置を求められますが、障害者雇用に関する助成金制度、職場への定着に関する手厚い支援もあります。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 JEEDのウェブサイトなどもご参考くださいませ。
松Dr.
傾聴とは
「聞く」は音や声が自然に耳に入ってくることを指しますが、「聴く」は相手の話に丁寧に耳を傾けることを言います。そして傾聴とは、相手の気持ちや思いを理解し、関心を示しながら話を本気で「聴く」ことを意味します。
相手が傾聴の姿勢で話を聴いてくれると不安や緊張が軽減し、自分を尊重してもらえた、大切にしてもらえたという感覚から信頼関係が生まれます。職場内で部下や同僚と良い関係を持つために、ここぞという時には傾聴の姿勢で話を聴くことが大切です。
傾聴のポイントはいくつかあります。①環境を整える:自分が余裕をもって対応できる時間と、相手が周囲を気にせず話せる場所を確保しましょう。②自分の態度を意識する:表情や視線は相手に穏やかに向けられているか、腕組みや足組みをしたり、話すスピードが速すぎたりして相手に威圧感を与えていないか意識しましょう。自然なタイミングでうなずきや相づちを返すことも相手に安心感を与えます。③話を遮らない:途中で話の内容を批判・否定したり、自分の考えを先に述べることは避けましょう。
何より大切なのは丁寧に誠意をもって対応することです。自分に相手が求める対応が困難と感じたときは、より適した相談先を紹介するのもよいでしょう。
赤澤Dr.
産業医通信2024-03