産業医通信 2024年5月号

  • 2024年5月7日

毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします

Contents

●花粉症の治療とセルフケア
●口唇ヘルペス
●痩せた若年女性でも糖尿病には要注意
●職場巡視について

 

5月病(適応障害)について

5月病というのは、新入生や新入社員がゴールデンウイーク明けころに心身の不調をきたすことを指します。
環境の変化そのものによるストレス、思い描いていたものと現実の相違、認知のゆがみによって不眠・意欲減退などの症状が出ます。その状態が持続すると、抑うつ状態・適応障害と呼ばれます。この状態では激励や叱責は逆効果であることが多く、認知のゆがみを早いうちに是正することが大切です。
認知のゆがみは本人が気づくことは難しいので、周囲の気づきが必要になります。何となく元気がない、髭や化粧・頭髪や服装の乱れ、居眠り、不自然な残業などがあれば、上席者がまず受容的態度でしっかりと本人の話を聞き、産業医などへの相談を促していただきたいと思います。
適応障害の背景にはストレスに対する脆弱性があることもあるため、専門医の受診が必要かどうか判断するために産業医への相談を活用していただければと思います。

宮田Dr.

  

健診結果の活かし方

健康診断は、ご自身の健康状態を把握いただく上で貴重な機会となっております。健康診断の結果の中でおそらく多いのは、高血圧・コレステロールや中性脂肪の高値・肝機能異常・血糖高値などではないでしょうか。
これらはよほど悪くならない限りは症状もなく、気に留めないことも多いです。
一方で、長期化すると脳卒中や心筋梗塞といった日常生活にも大きな影響を及ぼす病気につながりますので、やはり無視することができないものになります。健康診断はそういった異常を早期に把握し、重大な病気になる前に改善することが主な目的です。食事の偏りや運動不足など、思い当たるところがある場合は生活習慣の改善に取り組んでいただくきっかけとなりますので、健康診断の結果は必ずご確認ください。
「要精密検査」や「要治療」という結果は、医師の診察・判断が必要な状況です。その際は、必ず近医にてご相談いただくようご注意ください。
健診結果についてご不明な点がある場合は、産業医にもお気軽にご相談ください。

古谷Dr.

   

突然死について

元気で健康だと思われていた人が、突然亡くなることがあります。事故や自殺による死亡を除いて、意識がなくなってから24時間以内に死亡することを突然死と呼びます。
大人の突然死の原因は不整脈や心筋梗塞、狭心症などの心疾患が最も多く、次いで脳出血やくも膜下出血などの脳疾患が多くなっています。突然死は珍しいものではなく、総死亡の10人に1人が突然死です。
割合としては40~50代の中高年の男性に多く、発症する時間帯は深夜から未明にかけてが多いと言われています。
突然死を防ぐには、危険な心疾患を招く最大の原因である動脈硬化の予防が大切です。喫煙、運動不足、カロリー・塩分の摂りすぎなどの生活習慣を改善し、定期健診で血圧や血液検査、心電図などに異常がないか確認しましょう。動脈硬化が進行し、心筋梗塞や狭心症の危険性が高まっている場合、胸痛・動悸・息切れ・倦怠感・手足のむくみなどの自覚症状が現れることがあります。これらの症状を認めたら病院を受診してください。また突然の心停止が起きても、AEDや心臓マッサージなどの適切な処置を行えば助かることもあります。身近な人を守るために、日頃から救命処置を学んでおくことも大切です。

赤澤Dr.

   

新型タバコのリスクについて

新型タバコは、普通の紙タバコよりも有害物質が少なく健康被害も少ないと謳われることもありますが、一概にそうとは言えません。
新型タバコには、加熱式タバコと電子タバコの2種類あります。加熱式タバコはタバコ葉を加熱して発生する蒸気を吸うもので、一方、電子タバコは専用の「リキッド」という液体を加熱して発生する蒸気を吸うものです。加熱式タバコに含まれるタールの量は紙タバコより少なく、電子タバコにはタールは含みません。ただしそれ以外の様々な化学物質が含まれています。一見すると、タールが少ない分健康被害も少なくなりそうですが、そもそもタバコの煙には「吸っても安全なレベルはない」とされています。例えば、1日3本だけの喫煙でも、1日20本以上の喫煙と同じぐらい心臓病のリスクが上がると言われています。ですので、「新型タバコに変えて有害物質の量が減ったから、健康にもそんなに問題ないだろう」と考えるのは誤っていると言えます。今後さらに新型タバコの有害性についての研究結果が出てくると思われます。
新型タバコをなかなかやめられないという方も、保険診療で禁煙治療を受けられる場合がありますので、ぜひ禁煙外来でご相談ください。

本塚Dr.

   

産業医通信2024-05

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