産業医通信 2024年10月号
- 2024年10月31日
- 2024年11月14日
毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします
Contents
●ドライアイの原因と対策
●腹部大動脈瘤について
●糖尿病の合併症
●体のむくみ(浮腫)について
ドライアイの原因と対策
目の表面を覆う涙の層の安定性が低下する病気です。涙が均等に行き渡らず目の不快感や見え方の異常を生じ、目の表面に傷を伴うことがあります。典型的な症状として、目の乾燥感・異物感・充血・疲労感・見にくさなどが挙げられます。痛み・かゆみ・涙が出る・眩しく感じるなどの症状が出ることもあります。
ドライアイには多数の要因があり、涙の減少や蒸発などの原因のほか、多くの環境要因が影響することがわかっています。性別(女性)・加齢はドライアイの要因とされています。コンタクトレンズを使用している方は目が乾燥しやすく、仕事でパソコン・顕微鏡を使用される方やTVゲームのプレイ中は瞬きの回数が減ることで目が乾燥しやすくなります。空調による部屋の乾燥も発症のリスクとなります。特定の内科疾患や内服薬が原因でドライアイをきたすこともあります。
コンタクトの使用中止・人口涙液の点眼・パソコンを使った作業時間の短縮・加湿やエアコンの風向調整などの対策で症状が改善することもありますが、前述の症状はドライアイ以外の目の疾患でも生じる可能性があるものです。
思い当たる症状がある方は環境要因に対して対策を取るとともに、眼科医の診察を受けることを推奨いたします。
額田Dr.
腹部大動脈瘤について
腹部大動脈は心臓から直接つながっている最も太い大動脈の腹部から下の動脈で、ここから各臓器に血液を供給します。2cmほどの血管ですが、拡大して3cm以上の瘤(こぶ)のようになると腹部大動脈瘤といいます。
原因の多くは動脈硬化(血管の老化)といわれており、高血圧・高脂血症・喫煙が危険因子と言えます。特に喫煙はリスクが7倍に増え(過去の喫煙でも3.6倍増加)、さらに破裂の原因にもなるため禁煙が非常に重要です。また、圧倒的に男性に多いとされています。
瘤は無症状で徐々に拡大していき、破裂するときには強い腹痛や腰痛が突然起こります。意識を失うこともあり、70~80%で生命に関わります。
そのため、無症状でも主に破裂死を予防するために治療が行われます。早期の発見・治療が重要ですが、他の病気で腹部の超音波検査やCT検査を受けた時に偶然発見されることがほとんどです。瘤が小さい場合は経過を見ていき、5cm程度になると破裂する可能性がでてくるため手術の適応となります。
早期に発見するためにも、長年喫煙している50~60歳以上の男性は血管外科で相談をしてみても良いでしょう。
山本Dr.
糖尿病の合併症
糖尿病はさまざまな合併症を引き起こし、その時間経過により急に悪くなる合併症と時間をかけて悪くなる慢性の合併症に分けられます。
急性の合併症は、高血糖による脱水やケトン体の過剰な蓄積による意識障害などの致命的な症状を引き起こします。従来は、定時のインスリン注射ができなかったことがその契機として知られていましたが、最近では糖尿病の人による夏場の清涼飲料水の過剰摂取が契機となることもペットボトル症候群として世間的に認知されています。代表的な清涼飲料水のコーラ500mlには砂糖60gが含まれており、角砂糖15個に相当する量となりますので飲用にはご注意をお願いします。
血糖値が高いままの生活を続けると血管が脆くなります。特に細い血管が集まる網膜・腎臓・末梢神経系はその影響を受けやすく、糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症・糖尿病性神経障害が慢性の合併症としてみられるようになります。糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症は、失明や腎不全による人工透析導入の主な原因となっており、それらに至る前の進行予防が必要です。
合併症は良好な血糖コントロールによりその進行がとどまることから、適切な治療を続けることが求められます。
松Dr.
体のむくみ(浮腫)について
むくみ(浮腫)とは、水分が血管やリンパ管外に染み出し間質に過剰に貯留することをいいます。むくみのメカニズムとして次のようなものがあります。
①毛細血管内圧の上昇:心臓の機能が低下すると血液が心臓へ戻りにくくなり、血液中の水分が手足などの末梢に貯留することで起こります。
②血漿の膠質浸透圧の低下:血中内のたんぱく質のうち2/3を占めるアルブミンは血管内で水分を保持する役割(膠質浸透圧)があり、そのアルブミンが減少すると水分が血管外に出てむくみが生じます。肝疾患や腎疾患、低栄養などで低アルブミン血症になると生じます。
③血管(特に毛細血管)の透過性亢進:薬やその他の物質(誘因)に対するアレルギー反応やなんらかの原因で毛細血管から水分が染み出しやすくなり、間質に水分が貯留しむくみが発生します。
④リンパ管の障害:がん治療のためにリンパ節郭清などでリンパ管が圧迫や狭窄、閉塞することでリンパの流れが悪くなりむくみが起こります(リンパ浮腫)。
以上のむくみの対策はその原因を取り除くことが重要ですが、持続する場合や短期間で悪化する場合は医療機関を受診するようにしてください。
特に疾患がなくても、長時間座ったり立ちっぱなしで夕方になると足がむくむのは、1日中血液が下半身にたまってしまうのが原因です。これはゆっくり休んだりストレッチをして筋肉を伸ばすことで改善されます。つま先立ちになりかかとを上げ下げするエクササイズも効果的です。
睡眠不足・運動不足・ストレス・ホルモンの影響・アルコールや塩分の摂りすぎでもむくみやすくなるので注意が必要です。
本行Dr.
産業医通信2024-10