産業医通信 2024年11月号
- 2024年11月15日
毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします
Contents
●朝食のすすめ
●ストレスチェック結果の有効活用
●過労死対策
●休憩室と休養室の違い
朝食のすすめ
皆さんは朝ごはんを食べる習慣がありますか。昨年行われた農林水産省の調査によると、主な労働者層である20~59歳で朝食をほとんど食べない人の割合は8.9~31.3%でした。
朝食をとらないとエネルギー欠乏状態を引き起こし、集中力や作業効率の低下を招きます。また2型糖尿病・心血管疾患・脳血管疾患・メタボのリスク上昇や、メンタルヘルスの悪化とも関連があると報告されています。これらの疾患は労働生産性の低下とも関わってくるため、本人のみならず企業にとっても大きな問題といえるでしょう。
朝食は良い睡眠をとることにも関係しています。朝食摂取は体内時計のずれをリセットする働きがあります。朝食を抜くと体内時計が乱れ、寝つきや朝の目覚めが悪くなり、不眠症の原因となります。さらに朝の覚醒困難があると出勤までの時間が短くなり、朝食を抜く可能性が高くなるという悪循環も生じます。
健康に働いて生産性を上げるには、適切な睡眠の確保と習慣的な朝食摂取の両方が大切なのです。
赤澤Dr.
ストレスチェック結果の有効活用
ストレスとは病気・睡眠不足・暑さ・寒さ・不安・緊張・怒りなどのストレッサーに対する心身の反応をいいますが、目に見えず自分で意識しにくいものです。ストレスチェックを実施するのは、そうした気づきにくい高ストレスを可視化するために行います。
ストレスチェックを実施した会社では、全国平均と比較することで自社が働きやすい環境にあるか、自社のどこがサポートを必要としているかを認識する機会になり、業務効率の向上につながります。特に、同業種全国平均との比較、職種による傾向などを踏まえて結果の検討をすることが大切です。
ストレスチェックを受けた個人にとっては、自分が高ストレス者であるという気づきのきっかけになります。他の人に相談することで自分の環境や考え方の癖について改善することができるかもしれません。
誰に相談すべきか悩むときは産業医の面談もご検討ください。
宮田Dr.
過労死対策
過労死とは「業務における過重な負荷による脳・心臓疾患や業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする死亡」のことをいいます。
俗にいう「過労死ライン」は月80時間以上の時間外労働のことを指し、月80時間以上の時間外労働は脳・心臓疾患のリスクとなることが明らかになっております。そのため長時間労働対策として、月80時間以上の時間外・休日労働を行い、疲労蓄積があり面接を申し出された方に対して事業所は産業医や地域産業保健センター所属医師による面接指導を行う義務がございます(研究開発業務従事者や高度プロフェッショナル制度適用者は、月100時間以上の場合、疲労関係なく義務です)。
これはあくまで最低限の話であり、実際には月45時間以上の時間外労働を超えると健康障害のリスクが高まることから、普段より時間外・休日労働時間を削減することが重要です。年5日の年次有給休暇を確実に取得すること、勤務間インターバル制度の導入、メンタルヘルス対策、ハラスメント対策などが過労死防止対策として重要となります。
毎年11月は「過労死等防止啓発月間」となっています。安全衛生委員会にてぜひ議論していただけますと幸いです。
古谷Dr.
休憩室と休養室の違い
休憩室は、労働者が仕事の合間や休憩時間にリラックスするためのスペースです。椅子やソファ、テーブルなどが設置されており、息抜きや気分転換を図るための場所です。労働安全衛生法によると、休憩室の設置は義務ではなく努力義務とされています。そのため、スペースの制限がある場合には、まずは義務である休養室を優先して設置することが推奨されています。
一方、休養室は体調不良者が静かに横になれる場所です。労働安全衛生法および事務所衛生基準規則により、常時50人以上または常時女性30人以上の労働者を使用する事業場では、男女別々に休養室を設置することが義務付けられています。休養室にはベッドや布団が用意されており、体調不良者が横になって休むことが想定されています。また、利用者のプライバシーと安全が確保されるような配慮も求められます。
休憩室と休養室を兼用することは可能ですが、いくつかの問題点があります。例えば、休憩室は男女の区別が必要ない一方で、休養室は男女別にする必要があります。また、室内汚染や、休養室として使用中に他の労働者が休憩できなくなるなどの問題があります。
そのため、兼用は望ましくないとされています。
本塚Dr.
産業医通信2024-11