産業医通信 2025年1月号

  • 2025年1月9日

毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします

 

Contents

●健康経営について
●ストレス解消のための「何もしない時間」
●ヒートショック
●溶連菌感染症

 

健康経営について

健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取り組みが将来的に収益性等を高める投資であるという考えのもと、従業員の健康管理を経営的な視点から考えて、戦略的に取り組むことを指します。
例えば欠勤をするまでに至ってはいなくても何らかの心身の不調で業務効率が落ちている状態のことを「プレゼンティーズム」といい、欠勤の約18倍、医療費の約5倍の経済損失が生じているといわれています。健康経営に取り組むことでこの損失を未然に防ぐことができる可能性があります。
具体的には、定期健康診断の実施、過重労働対策、メンタルヘルス対策、受動喫煙対策、感染症対策、健康増進・生活習慣病予防対策、保健指導といったことが実施する事項となりますが、何よりもまず経営者の方が企業として対策に取り組む旨を文書等へ明文化し、社内外に発信することが非常に重要です。これを「健康宣言」といい、加入する保険者などの宣言事業に参加することで様々なサポートを受けられます。
また健康経営優良法人認定制度なども用意されており、企業としての様々なメリットもございますのでぜひ一度ご確認ください。

古谷Dr.

 

ストレス解消のための「何もしない時間」

毎日の仕事や家事に追われ、気づけば疲れを溜め込んでしまっている人も多いのではないでしょうか。
そのような忙しい日常の中に、何もしないリセット時間を意識的に設けることは心身の健康を保つうえで非常に重要です。外部のストレスから一時的に距離を置くことで自律神経のバランスが整いやすくなり、心拍数や血圧の安定が期待できます。
また休憩によって脳がリラックス状態に入り、ストレスホルモンの過剰分泌を抑制することがわかっています。仕事で集中力を長時間保つのは難しいですが、1時間に1回短い休憩を挟むと疲労の自覚が軽減され、集中力や記憶力が回復します。
短時間でできるリセット方法としては、瞑想や深呼吸がおすすめです。椅子に座って1分間目を閉じ、呼吸に集中しましょう。吸って、吐いて、をゆっくり繰り返すと気持ちが落ち着いてきます。
小さなリセットを繰り返すことで、ストレスが溜まりにくい心身を作ることができます。

赤澤Dr.

 

ヒートショック

ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、身体がダメージを受ける現象を指します。特に冬場、暖かい部屋から寒い場所への移動や入浴時に発生しやすく、高齢者に多くみられます。
ヒートショックは血圧の急激な上昇と下降を引き起こし、心臓や脳に負担がかかることで失神や脳卒中、心筋梗塞などを引き起こします。
具体的には、暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室に移動すると血管が収縮し血圧が上がり、その後熱いお湯に浸かることで血管が拡張し血圧が下がります。このような急激な血圧変動がヒートショックの原因です。
ヒートショックを防ぐためには、脱衣所や浴室を暖房で温めること、シャワーで浴室全体を温めること、入浴は冷え込む深夜ではなく夕食前や日没前に行うこと、お湯の温度を41℃以下に設定することなどが効果的です。また、一人での入浴を避けることも推奨されます。
このような対策を講じることで、ヒートショックによる健康被害を未然に防ぐことが可能です。

本塚Dr.

 

溶連菌感染症

溶連菌とは溶血性連鎖球菌の略です。中でも重要なのがA群β溶血性連鎖球菌になります。咽頭炎や皮膚感染症の頻度が多くみられ、溶解酵素や毒素のため壊死性筋膜炎を起こして重篤化することがあります。人食いバクテリアと呼ばれて報道などで取り上げられていたことを覚えておられる方も多いのではないでしょうか。
コロナ禍で感染症対策が十分なされていたことで抑えられていましたが、感染症対策が疎かになるに伴いかなり増加しており、今一度マスクや手洗いの重要性を認識していただきたいと思います。
また感染後の遅発性合併症として、リウマチ熱・急性糸球体腎炎も重要です。これらは感染後、1~3週間後に急に発症します。
治療方針を決めるために病歴が重要になるため、発熱や皮膚症状、血尿で受診するときには先行する咽頭炎などがなかったか必ず医師に伝えましょう。

宮田Dr.

 

産業医通信2025-1

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