産業医通信 2024年7月号
- 2024年7月3日
毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします
Contents
●夏バテ対処法
●汗疹(あせも)について
●外国人労働者の安全衛生管理
●海外での感染症予防
夏バテ対処法
夏バテとは、屋内と屋外の気温差によって体温調節がうまくできず、自律神経のバランスが乱れてしまうことです。具体的には、「体がだるい」「なんとなく食欲がない」「寝つきが悪い・眠りが浅い」などの症状が出ます。注意すべきなのは、熱中症のように体温が高くなっているというわけではないということで、自分でも気づかないうちに夏バテになっていることがあります。
夏バテ対策としては、①屋内で体を冷やし過ぎない、②朝・昼・夕と規則的な食生活を送る、➂夜更かしをしないことです。①屋内で体を冷やし過ぎるのは、冒頭でお話ししたように、屋外との気温差で自律神経が乱れる原因になります。具体的には普段の室温は26℃前後を目安にするのが良いでしょう。②、➂これらは夏バテに限らず、よく耳にすることだとは思います。そもそも自律神経というのは体の調子を一定に保つためのアクセル・ブレーキのようなもので、食事と睡眠で生活のペースが乱れてしまうと、アクセル・ブレーキの調整が難しくなってしまいます。基本的なことではありますが意外と大事なことなので、生活のリズムはできるだけ乱れないようにしましょう。
本塚Dr.
汗疹(あせも)について
汗疹は汗管の閉塞により皮膚内に汗が貯留することで起きます。閉塞が起きた深さによって分類され、症状も異なってきます。閉塞部位が深ければ疼痛も伴うようにもなります。
一般にあせもと呼ばれるのは紅色汗疹(こうしょくかんしん)というもので、チクチク感と掻痒を伴う丘疹です。高温環境や皮膚の閉塞(寝たきり・厚着・入浴などで汗を流さない、通気性の悪い軟膏の多用)によって起こるため、これからの季節は要注意です。
対策は冷却と乾燥、つまり空調の適切な使用です。また、風通しの良い清潔な服の着用、シャワーや入浴で皮膚を清潔に保つことも大切です。
痛みやかゆみが強い場合は塗布薬などを使用することもありますので、皮膚科を受診するようにしましょう。
宮田Dr.
外国人労働者の安全衛生管理
日本では令和3年時点で172万人の外国人労働者がおり、また外国人労働者を雇用する事業所も増加しております。それに伴い、外国人労働者の休業4日以上の死傷災害も増加傾向にあり、安全対策が課題となっています。
事業所で実施すべき安全教育上最も問題となるのは、言葉の壁による伝達不足ではないでしょうか。日本語を十分に理解できない場合は、母国語に翻訳された教材・視聴覚教材などリスクアセスメントに踏まえて整理した、安全衛生教育の内容に適した教材を入手・整備する必要があります。また日本語で説明する場合も、いわゆる日本語の習熟度に応じて「やさしい日本語」(尊敬語・謙譲語を避け丁寧語を用いる、オノマトペを使用しないなど)を使用し、イラストや写真を交えて説明することも重要です。
中央労働災害防止協会や外国人技能実習機構では多種の言語に対応したテキストや資料が、厚生労働省のホームページでは「未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル」や「外国人労働者向け安全衛生視聴覚教材」も用意されておりますのでご活用ください。
古谷Dr.
海外での感染症予防
コロナの流行が落ち着いた今、海外出張が再開されたり休暇を利用して海外旅行に行く人が増えていることと思います。しかし海外では、日本では見られないような病気が流行していたり、日本よりも高い頻度で発生している感染症が報告されていることがあります。食べ物や水を介した消化器系の感染症(A型肝炎・腸チフスなど)、蚊を介した感染症(マラリア・デング熱・日本脳炎・黄熱など)、ダニや動物を介した感染症(リケッチア症・ライム病・狂犬病など)が一例です。海外でこういった感染症にかからないようにするために、渡航前には正しい知識と予防方法を身に付けることが大切です。渡航先や活動内容によってはワクチン接種が推奨されることもあります。
一般的な予防策は、生水・氷・カットフルーツの入ったものは避ける、食事は十分に火の通った信頼できるものを食べる、蚊・ダニに刺されないよう服装に注意し、必要があれば虫よけ剤を使う、等です。
また海外では時差や気候の違いなどから様々なストレスを受け、その結果免疫力が低下し病気にかかりやすくなることも考えられます。厚生労働省や首相官邸のサイトには海外での感染症予防について詳しい情報が載っていますので、ぜひ参考にしてください。
赤澤Dr.
産業医通信2024-07