産業医通信 2025年5月号
- 2025年5月2日
毎月朋愛会より旬の情報をお届けいたします
Contents
●新入社員のメンタルケア
●厚生労働省「職場のあんぜんサイト」を活用した労災予防のすすめ
●便秘について
新入社員のメンタルケア
新入社員は環境変化や未経験業務によるストレスを抱えやすい状況にあります。特に入社後3~6ヶ月は「メンタルを病みやすい時期」として注意が必要です。
主なストレス要因としては、環境の大きな変化、職場の人間関係構築の難しさ、業務知識・スキル不足による不安、リモートワークによるコミュニケーション不足などがあります。メンタル不調の兆候としては、意欲低下、疲労感増加、食欲不振、睡眠障害、遅刻・欠勤の増加、コミュニケーションの減少など様々です。
メンタルケアについて企業が実施すべき対策は、心の健康づくり計画の策定やストレスマネジメント研修(セルフケア方法の習得支援)、相談窓口設置、ストレスチェック実施などが挙げられます。また、上司・先輩からの声かけや質問しやすい環境づくりも重要です。上司・先輩が心がけるポイントは、強い叱責や否定を避け、注意するときには客観的な理由を伝えること、挨拶・雑談などのコミュニケーションをとることです。
適切なメンタルヘルスケアにより、新入社員が安心して仕事に取り組める環境を整えることで、離職防止や生産性向上につながり組織全体の持続的な成長に貢献します。
本塚Dr.
厚生労働省「職場のあんぜんサイト」を活用した
労災予防のすすめ
日ごとに暖かくなり業務にも慣れてくる5月は、油断や疲労の蓄積から労働災害が発生しやすい時期です。
こうした災害を未然に防ぐために、厚生労働省が公開している「職場のあんぜんサイト」は有効な情報源となります。このサイトには、労災の統計情報や予防策、実際の取り組み事例、教育資料(ポスター・動画等)などが豊富に掲載されており、安全衛生活動にすぐ活かせる内容が揃っています。
業種別に労災事例を検索することもでき、自社の業態に即した内容をピックアップして共有・周知することも効果的です。例えば、ヒヤリ・ハット事例の共有やリスクアセスメントの導入、安全衛生委員会での話題提供など日々の活動に役立つ情報が充実しています。産業医としてもこうした情報をもとに現場巡視や安全指導を行ってまいります。
日常的な声かけや気づきの積み重ねが重大事故の防止につながりますので、ぜひ各職場での積極的なご活用をご検討ください。
山本Dr.
便秘について
便秘とは一般的には3日以上続けて排便がない状態、または排便があっても残便感がある状態のことを指します。
便秘の原因は大きく2つ、腸の機能の異常と物理的な異常に分類されますが、80~90%近くは腸の機能の異常であるとされていますので、今回は主に腸の機能についてお話いたします。
原因として多いのは、水分・運動・食物繊維不足や加齢に伴う大腸機能の低下です。加齢は避けられませんが、他に関しましては規則正しい生活習慣を心がけていただくことで改善可能ですので、生活習慣を見直していただけますと幸いです。
一方で、「過敏性腸症候群(IBS)」という腸の過緊張によって腸の機能の異常をきたす疾患もございます。こちらに関しては便秘だけでなく、下痢を伴う場合もあり注意が必要です。心身のストレスが影響する場合もあるとされておりますので、思い当たる場合はお近くの消化器内科受診をご検討ください。
最後に、排便をコントロールする骨盤底筋群の筋力低下なども便秘を引き起こす原因となることもございますので、筋力トレーニングも有効です。
上記が主な便秘の原因ではございますが、中には腫瘍や腸が狭くなっているなどの疾患が隠れている場合もございますので、症状が続く場合は消化器内科にて一度ご相談ください。
古谷Dr.
産業医通信2025-05