産業医通信 2023年7月号

  • 2023年7月7日
  • 2023年11月8日

毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします。

Contents

●安全衛生委員会の役割
●一次救命処置について
●食中毒について
●腰痛

安全衛生委員会の役割

安全衛生委員会、もしくは衛生委員会は、50人以上の労働者がおられる事業所では月に1度開催が義務付けられております。労働安全衛生規則では安全衛生に関する規則、リスクアセスメント、安全衛生に関する計画の作成・実施・評価および改善、安全衛生教育の実施計画、定期健康診断の結果に基づく対策、長時間労働対策、メンタルヘルス対策などが主な審議事項とされております。
中央労働災害防止協会の調査では、委員会が活発な事業所ほど労働災害の減少傾向が強いことが示唆されていますので、委員会をうまく運用することが安全衛生向上に繋がる鍵となります。
ルールや計画に基づいて着実に運営するシステムや、委員を含めた職場全員が主体的で積極的な参加ができる風土が欠かせません。委員会での議事を是非従業員の方にも広くご周知いただき、実際に現場で議事が上手く浸透しているか、上手く行かない場合は現場からのフィードバックを再度委員会で審議いただくといった循環ができますと委員会もより活性化すると思われます。
健康に関する講話や健康診断結果に応じた対策なども、是非産業医とご相談いただけましたら幸いです。

古谷Dr.

一次救命処置について

BLSという言葉をご存知でしょうか。心肺停止または呼吸停止に対する一次救命処置のことです。具体的にはAEDの装着と胸骨圧迫です。
心肺停止の人を見つけた時、何もせず救急車の到着を待っていると、平均的な到着時間でも救命率は10%未満です。ところが、見つけた人が速やかにBLSを行った場合は30%以上になります。医療機関や救急隊ではなく、最初に見つけた人の行動が大きな意味を持つのです。
想像してみてほしいのですが、急に目の前で人が倒れた時、正しいBLSを行えるでしょうか。大切なのは心構えと方法です。
BLSにおいて胸骨圧迫は非常に重要なのですが、押す位置は胸骨の下半分、深さは5cm、回数は100~120/minと正しい知識があっても、実際には有効な胸骨圧迫が出来ていない人がほとんどです。知識もなければさらにその効果は期待できません。
何もしないよりはましですが、目の前の誰かを助けたいのであれば両方を身につけなければなりません。職域救急研究会などの講習を受け、有効なBLSができるようになることを目指しましょう。

宮田Dr.

食中毒について

食中毒とは、有毒物質が飲食物を介して体内に取り込まれることで、腹痛、下痢、嘔吐などの症状をきたす疾病のことです。
1年に大体20000人程度の罹患が報告されています。
今の季節は鶏肉料理でみられるカンピロバクター、シチューの作り置きでみられるウェルシュ菌による細菌性食中毒が多く報告されています。
病原菌の種類により数時間から1週間後まで発症までの時間が異なり、また身体に取り込まれた病原菌の量などで症状の程度も異なります。症状が軽度の場合にはOS1のような経口補水液で改善しますが、頻回の嘔吐や下痢による脱水症が酷い場合には病院入院での点滴治療が必要となります。
細菌性食中毒を予防するためには、三原則の実践が有効です。①細菌をつけない。②細菌を増やさない。③細菌をやっつける。
具体的には、それぞれ①調理前や食事前の手洗い。②調理済み食品のすみやかな摂食や常温放置をせず冷蔵庫で保管。③食品の適切な加熱、可能ならば75℃で1分以上行うことです。
食中毒に関しての最新情報、職場や家庭での衛生教育に役立つリーフレット、動画等の参考資料の取得には厚生労働省のホームページが適しているように感じます。

松Dr.

腰痛

腰痛の生涯発生率は80%以上と言われており、私たちにとって非常に身近な症状の一つです。
腰痛を引き起こす原因としては椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、圧迫骨折など整形外科的な疾患に加え、尿路結石、子宮筋腫、解離性大動脈、胆のう炎、十二指腸潰瘍などの様々な身体疾患がありますが、原因が特定できる腰痛は全体の15%ほどしかありません。ほとんどの腰痛は原因が特定できない非特異的腰痛と言われるもので、決定的な治療法がないまま、長い期間痛みと付き合っていかなければならないこともあります。
長引く痛みは人を不安にさせ、悪化しないよう必要以上に腰をかばってしまいがちです。しかし最近は安静を保ちすぎるとかえってその後の経過が良くないことがわかっています。
医師から運動を禁止されておらず、痺れなどの神経症状がない場合は、無理のない範囲で体を動かし仕事や普段の活動を維持するようにしましょう。中腰や長い時間の座位、肥満など腰痛を悪化させる生活習慣にも注意が必要です。

赤澤Dr.

産業医通信2023-07

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