産業医通信 2023年11月号

  • 2023年11月8日
  • 2023年11月9日

毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします

Contents

●寒い季節のメンタル不調
●急性脳症とは
●職業性アレルギーについて
●過重労働と労働災害認定

寒い季節のメンタル不調

季節の変わり目は気温などの環境変化や、ライフスタイルの変化に順応していくために疲れが溜まりやすく、体調を崩したり精神的に不安定になりやすいと言われています。
こういった季節による精神変調の中でも典型的なものは、秋から冬にかけて寒くなる時期に気分が落ち込み、春先に改善する冬季うつ病です。
冬に気分や意欲が低下しやすくなる、その原因の一つに日照時間の不足があります。
日光に当たる時間が少ないと脳内の神経伝達物質であるセロトニンの分泌が減り、メラトニンの分泌が増えることが分かっていますが、これらの気分や体内リズムに影響を与える神経伝達物質の過不足でうつ病になりやすくなるのです。そのため冬季うつ病は、赤道付近の地域よりも日照時間の短い高緯度の地域で発症率が高いと言われています。
予防として、冬場は太陽を浴びる時間を意識的に増やしたり、昼間の部屋の照明を明るくしておくのがいいでしょう。
また就寝・起床時間を一定にして生活リズムを崩さないことや、運動習慣、栄養バランスのいい食生活も心身の安定につながります。

赤澤Dr.

急性脳症とは

急性脳症は何らかの原因により脳が腫れるなどして機能障害、けいれんなどを起こすものです。感染症に伴うこともありますが原因ウイルスが脳で検出されないのが脳炎との違いです。
多くは感染や代謝異常が原因です。インフルエンザ罹患に伴うインフルエンザ脳症、コントロールの悪い糖尿病でみられる糖尿病関連脳症、アルコール依存症や偏食の方でみられるビタミンB1欠乏によるウェルニッケ脳症、肝障害による肝性脳症、腎疾患や精神疾患に伴う水中毒、内分泌疾患からくる低ナトリウム血症関連脳症などが有名です。
発症すると治療を行っても意識障害や認知機能障害、運動麻痺などの後遺症が残り、救命できても日常生活に大幅な制限を強いられることがあります。
予防に大切なことは感染症に罹患しないこと、糖尿病や肝障害、腎障害を放置せず医療機関を受診し、コントロールしておくことです。

宮田Dr.

職業性アレルギーについて

職業性アレルギーは、職場にて特定の環境、特定の物質に暴露することで引き起こされるアレルギーのことを指します。
喘息や鼻炎(木材、塗料、化学物質、花粉、カビなど)、接触性皮膚炎(化学物質、金属、有機溶剤など)が代表的です。
職業性アレルギーは、業務においてやむを得ず暴露されることで引き起こされますので、その予防には環境の調節が必須となります。例えば、有機溶剤であれば直接皮膚に触れないように適切な服装と手袋を装着する、吸い込まないように局所排気や全体換気を適切に行うことが重要です。また、自身が取り扱っている化学物質に暴露されることでどういった症状が引き起こされる可能性があるかを把握することも安全対策として非常に大切です。セーフティデータシート(SDS)には引き起こされる症状、暴露時の対応法、取り扱い・保管時の注意事項などが記載されていますので、こちらも併せてご確認下さい。
実際に上記のようなアレルギー症状で今お困りになられている方がおられましたら、一度アレルギー科の受診などもご検討いただけますと幸いです。

古谷Dr.

過重労働と労働災害認定

過重労働とは疲労を回復できないような長時間にわたる労働です。
労働時間は健康に影響を与える要因であり、その長さと脳血管疾患、虚血性心疾患などの発症には強い相関関係が認められています。
ひと月の残業時間が100時間以上、または過去数ヶ月の残業時間の平均が80時間を超えるものが長時間労働の労災認定判断基準とされています。この判断基準は、いわゆる過労死ラインとしても知られており長時間労働の危険性として世間一般に認知されてきました。
ただ近年、残業時間が過労死ラインを超えていないにも関わらず業務中の死亡事例があったことなどから、2021年労災認定基準が改正されました。従来は労働時間が現実的な認定基準でしたが、労働者の心身に大きな負担となる要因も認定基準として考慮されることになりました。
事業者様においては、業務の負担に加えて心のケアについても配慮が必要となっています。

松Dr.

産業医通信2023-11C

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