産業医通信 2024年1月号
- 2024年1月5日
毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします
Contents
●膵炎について
●血行障害とは
●ドライバーの健康管理
●軽度認知障害(MCI)について
膵炎について
膵臓は胃の裏側にある、成人で長さ15cm前後の臓器です。
膵臓は血糖値を下げるインスリンの他に、食物を消化する膵液を分泌します。
通常、膵液中の消化酵素は膵臓内では活性化しませんが、膵炎では、なんらかの原因で活性化した消化酵素が膵臓自身を破壊します。臨床経過により急性膵炎と慢性膵炎に分類されます。
急性膵炎は飲酒や暴飲暴食から数時間後におこりやすく、これまでに経験したことのないような腹痛がある場合には、すみやかな医療機関への受診をすすめます。
慢性膵炎は長期にわたる飲酒が主な原因です。当初の症状は腹痛ですが、飲酒の継続による膵臓組織の破壊が進むにつれて、数年後には消化不良による下痢や体重減少などがみられるようになります。この時点では完治が見込めず、膵臓がんのリスクも高めることになります。
最近の報道によれば、アルコール性肝疾患による死亡者数の増加などから適切な飲酒量の判断に役立つ飲酒ガイドラインの案を厚生労働省がまとめたようです。肝臓と同じ沈黙の臓器である膵臓の健康のためには、節酒が望ましいかもしれません。
松Dr.
血行障害とは
血行障害は、血管の一部が狭くなったり閉塞したりして血液の流れが悪くなることを指します。動脈硬化に関係しており、手足など末梢の疼痛やしびれを起こします。糖尿病や高血圧が背景に多く、喫煙や運動不足が影響します。
なってしまうと対症療法が中心になるので、予防することが大切です。バランスのいい食事と日々の運動を心がけること、健診で糖尿病や高血圧を指摘されたら早期に受診し、良好なコントロールを保つことで予防できます。
しびれや疼痛、こわばりが持続する場合は、原因となる疾患がさまざまであるため、まず診断をしてもらうことが大切です。まず内科を受診し、それから専門外来へ紹介してもらうようにしましょう。
下肢の静脈瘤など見た目が明らかで掻痒が強いようなときは血管外科を受診して相談してみるのもよいでしょう。
宮田Dr.
ドライバーの健康管理
運転業務に従事される方の健康状態を維持することは、業務安全性に直結します。体調不良や未治療・治療不十分の状態で業務を継続し事故が発生した場合には、事業所の安全配慮義務違反も問われる可能性があるため重大な責任があります。
特に高血圧・糖尿病などは脳血管障害や心筋梗塞などにつながりやすく、運転時に発症した場合は重大事故発生の可能性もあることから、健康診断にて指摘された場合は必ず近医にてご相談下さい。
また会社ご担当者様からも該当の方に対しては、受診の積極的な促しや受診時間の確保なども必要となります。その上で、普段は乗務前点呼にて体調・疲労蓄積・内服薬を適切に内服しているかなどをご確認いただくことでより安全に業務に従事可能です。
「公益社団法人全日本トラック協会」様の「トラックドライバーの健康管理マニュアル」や「トラックドライバーの健康管理手帳」などをご参考いただけますと、より職場でも周知しやすくなるかと思いますので、ご活用ください。
古谷Dr.
軽度認知障害(MCI)について
MCIという言葉をご存じでしょうか。MCIは、物忘れはあるものの日常生活ヘの影響はほとんどない、正常と認知症の間の状態を指します。
放っておくと認知症に進行しますが、適切な予防をすることで正常な状態に戻る可能性があります。具体的にはMCIの約5~15%の人が1年で認知症に移行し、約16~41%の人は正常な状態に戻ることがわかっており、早くから認知症の予防対策を行っていくことが大切です。
糖尿病、高血圧、脂質異常症の方はいずれも認知症になりやすいと言われており、生活習慣病予防(メタボ対策)が重要となります。運動することも認知機能低下を防ぐ効果があります。その他にもバランスの良い食事をとる、社会活動に参加する、人と会話をする、外出頻度を増やす、などが有効です。
高齢化が進む社会では、認知症を発症してもいかに働き続けるかということが差し迫った問題となっていますが、まずは認知症にならないための予防対策を日常で意識してみましょう。
もし以前より物忘れが増えたと自覚する場合や、周囲の人から物忘れを指摘されることが多くなった方は「物忘れ外来」で相談されることをお勧めします。
赤澤Dr.
産業医通信2024-01web