産業医通信 2024年6月号

  • 2024年6月10日

毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします

Contents

●休職者への対応時に必要な配慮
●歯科疾患について
●胃食道逆流症(GERD)について
●光線過敏症(日光アレルギー)

 

休職者への対応時に必要な配慮

ここでは特に大事な3点を取り上げてみたいと思います。
まず、何も情報がない状態で休養に入るのは従業員にとって不安なため、従業員が安心して療養期間を過ごせるように支援していきましょう。休養に入る段階で連絡を取る場合の窓口や連絡方法を決めておき、併せて診断書の提出方法や復職手順についても事前に説明をしておくと良いでしょう。
次に、休職期間中の会社からの連絡は、従業員の負担にならない範囲で行いましょう。休職中の従業員と連絡を取り合う頻度は就業規則に明記されていない限り、病気の特性やその時の状態によって判断する必要があります。例えば、休職開始時の病状が不安定な段階では、必要最低限の連絡にとどめるのが望ましいといえます。一方で、復職を検討する段階では、復帰に向けた連絡調整が必要になると考えられます。判断が難しい場合には、産業医や主治医に相談するようにしましょう。
最後に、個人情報の取り扱いに十分に注意しましょう。休職者の個人情報を取り扱う担当者を明確にして、必要最低限の人数に限定しましょう。個人情報の管理は徹底し、第三者に情報を開示する場合は本人の了承を得てから行うようにしましょう。

鹿島Dr.

 

歯科疾患について

歯・歯肉の健康は全身の健康維持にも重要です。代表的な歯科疾患として虫歯・歯周病が挙げられます。
歯周病は抜歯原因の40%を占める病気で、30歳以上では80%以上の方になんらかの歯肉所見をみとめますが、初期は自覚症状が少なく気が付きにくい側面があります。そして、歯周病は糖尿病と相互に悪影響を及ぼす関係であることがわかっています。歯周病などの歯科疾患はそのほかにも心疾患・慢性腎臓病・呼吸器疾患・関節リウマチ・がんなどの疾患との関連が報告されています。そのため、歯・歯肉の健康を維持・改善するための歯科治療は体の健康維持にとっても大切です。
歯科疾患は歯磨きによる清掃に大きく影響を受けますが、生活習慣病と同様、日々の習慣にも影響を受けます。規則正しい食生活・運動・禁煙・節酒といった習慣は、歯・歯肉の健康維持に効果的です。歯の清掃については歯科で正しい磨き方を指導してもらうと良いでしょう。症状がない時でも定期的に歯科で清掃を受け、歯・歯肉の状態を確認してもらうことで、歯科疾患にかかっても悪化を防ぐことができます。状態が良い方でも3か月に1回を目安に受診するのがおすすめです。

額田Dr.

 

胃食道逆流症(GERD)について

胃食道逆流症(GERD)とは、胃内容物が食道へ逆流しておこる病気の総称で、逆流性食道炎の合併、あるいは胸やけを中心とした逆流症状が生じます。
GERDは近年日本でも急速に増加しており、生活の質(QOL)に大きく影響し、症状のあるGERD患者さんのQOLは、軽度の心不全や狭心症、十二指腸潰瘍よりも低いと言われています。逆流症状とは胸やけと食道への逆流感(呑酸:どんさん)です。胸やけとはみぞおちから前胸部にかけての灼熱感で、呑酸とは胃酸の口腔内逆流により感じる苦みです。逆流症状の感じ方は様々で、胸痛と感じることもあれば、むかむか感や胸のちくちく感と感じる場合もあります。慢性につづく咳や喘息、のどの違和感や副鼻腔炎、あるいは睡眠障害といった食道以外の合併症を伴うことも多く、GERDがさまざまな症状の原因となっていることがあります。
治療の目標は、症状の軽減とQOLの向上です。過食や脂肪分摂取過多を避ける肥満の予防や、食後すぐに横になることを避けるなどの食事・生活指導も有効ですが、それだけでは不十分なことが多く薬物治療が必要となることがしばしばです。症状で悩まれている方はぜひ消化器内科を受診して相談してみてください。

山本Dr.

 

光線過敏症(日光アレルギー)

光線過敏症とは、日光に当たることが引き金となって皮膚のかゆみや赤み、発疹などが生じる病気です。日光によって免疫系が過剰な反応を起こして症状が出ると考えられていることから、「日光アレルギー」とも呼ばれます。通常は反応を示さないような光の量や種類にも反応します。
原因には、薬剤・食品・化学物質などのほか、遺伝性疾患・代謝性疾患などがあります。原因となる薬剤として、降圧薬、利尿薬、抗不整脈薬、抗うつ薬・抗精神薬、抗悪性腫瘍薬などがあります。また、非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)のケトプロフェンやジクロフェナクを含有する外用薬では光アレルギー性接触皮膚炎の頻度が多いことがよく知られており、使用したことを忘れた数か月後に症状が出ることもあり注意が必要です。原因となる疾患としては、ポルフィリン症・色素性乾皮症(XP)・全身性エリテマトーデス(SLE)などがあります。
光線過敏症の予防には帽子や日傘を使う、長袖の衣服を着用して肌の露出を避ける、化粧(ファンデーション)や日焼け止めなどの対策が有効です。原因が病気によるものである場合は、原因疾患の治療を行うことで症状が改善することもあります。しかし遺伝性疾患などは治療法がなく、場合によっては生涯にわたって光線過敏症を防ぐ対策が必要になります。

本行Dr.

 

産業医通信2024-06

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