産業医通信 2024年9月号

  • 2024年9月5日

毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします

Contents

●企業防災について
●結核とは
●怒りをコントロールする
●日中の眠気の原因と対策

   

企業防災について

日本は世界的に見て自然災害が多い国であり、特に大規模震災に関しましては今後30年以内に発生する確率が南海トラフ地震は70~80%とされています。東日本大震災での津波被害の経験から、自然災害発生時にも使用者の安全配慮義務が存在することが確認されています。
企業防災は大きく分けると「防災対策」と「事業継続」の2つに分類されます。前者は発災前・発災時の被害軽減と影響回避の備え、後者は発災後の復旧への備えを意味します。
防災対策の具体的内容では事業所の耐震化、オフィス家具・機器の転倒対策、食料・水・簡易トイレ・医薬品などの備蓄、避難経路の確認、避難訓練などがあげられます。
事業継続に関しましては、事業継続計画(BCP)の策定がまず優先されます。不測の事態が発生しても重要な業務を中断させない、または中断しても可能な限り短期間で復旧するための方針を策定することを指します。減災対策、発災時の組織系統、発災時の出社・帰宅体制を予め定めておくことで混乱を抑制することが可能です。
大阪府からは「超簡易版BCP『これだけは!』シート」も配布されておりますので、ご参考いただけますと幸いです。

古谷Dr.

   

結核とは

結核は結核菌による感染症で、その歴史は古くエジプトのミイラにもその痕跡があるといわれています。明治から戦前にかけて本邦では国民病といわれ、多くの患者がいました。
結核は過去の病気と思われがちですが、現在も新規患者は3万人以上存在し、2千人以上が亡くなっています。特に大阪は多いことが知られています。
空気中の飛沫を介して感染するため、過密環境で換気が不十分な状況で結核菌を飛散させている人といると感染する確率が高くなります。効果的な治療を行えば2週間以内に感染性は消失するといわれていますが、治療は半年ほどを要し、加齢や疾病による免疫の低下などで重篤化するため予防が大切です。
最も効果的な予防はBCGワクチンの接種です。本邦ではほとんどの方が乳幼児期に接種していますが、小児の結核性髄膜炎や粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)の発病防止にきわめて有効である一方で、成人の肺結核に対する発病予防効果は50%程度とされる点に注意が必要です。

宮田Dr.

   

怒りをコントロールする

イライラや怒りなどの感情を適切にコントロールすることは、職場の円滑なコミュニケーションの促進や、ハラスメントを抑制するという観点からも非常に重要です。
人が人に怒りを感じるのは価値観の違いによるところが大きく、自分が「~すべき」(挨拶はするべき、話は静かに聴くべき等)と思っていることを破る人に腹が立ち、「~すべき」項目が多い人ほど怒りの機会も多くなります。「~すべき」という価値観は育った環境や時代の影響を受けるため、怒りが生じたら相手の背景にある価値観について考えたり、果たして自分の価値観が一般的なのか振り返ってみるのがいいでしょう。
とはいえ、怒りは予期せず突然沸いてきます。怒りに支配されて衝動的に暴言を吐いたり、物に八つ当たりすることを避けるためにもとっさの対処法を身につけておきたいものです。様々な対処法がありますが、まずは怒りをすぐに表現せず6秒だけ待ってみましょう。6秒で怒りが消えるわけではありませんが、衝動的な言動が抑えられ理性が働くようになります。そしてこの間に今の怒りが10点中何点なのか評価してみましょう(0点:穏やか~10点:人生最大の怒り)。
これを怒りのたびに繰り返すことで自分の怒りを冷静に、客観的に見つめやすくなります。

赤澤Dr.

  

日中の眠気の原因と対策

日中の眠気の原因には、不眠症・睡眠時無呼吸症候群・ナルコレプシー・うつ病・PMS(月経前症候群)・反復性過睡症などがあります。簡単に言い換えると、夜しっかり眠れていないせい、あるいは日中でもどうしても眠くなってしまう状態・疾患があるせいです。
前者については、睡眠衛生という形である程度は自身で対応ができます。具体的には、睡眠時間を7時間程度とる、日中に日光を浴びる、寝る前にスマホなどの画面を見ない、寝室は暗くして寝る、就寝1~2時間前に入浴する、運動習慣を作る、朝にきちんと朝食をとる、カフェイン(コーヒー・紅茶・エナジードリンク等)をとりすぎない、などです。
これらをある程度守れていても日中に強い眠気が頻繁に生じるとなると、冒頭に述べた何らかの原因が潜んでいる可能性がありますので、睡眠外来などのある医療機関を受診しましょう。

本塚Dr.

  

産業医通信2024-09

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