産業医通信 2024年12月号

  • 2024年12月4日

毎月産業医の先生より旬の情報をお届けいたします

   

Contents

●ハラスメント発生時の対応
●アルコールによる健康障害
●咳喘息とは?
●HIV感染症について

   

ハラスメント発生時の対応

ハラスメントに関連した労働災害認定件数が増えてきていることなどから令和4年4月以降、全ての事業者にハラスメント防止措置が義務付けられました。ただ、法令に準じた事前の対策にも関わらずハラスメントの発生を防ぐことは難しいようです。
ここではハラスメント事案発生時の事業者の対応につきまして、簡略ながら手順を紹介します。
まず、ハラスメントに関して事実関係の調査が必要となることから、中立的な立場となる調査担当者の選任、また可能なようでしたら法律の専門家を交えた調査委員会を設置します。調査担当者は被害者・周囲の関係者・加害者とされる者から聴き取りを行い、事故調査報告書を作成します。
次いで、事故調査報告書などによりハラスメントの事実確認がされた場合には、規則により加害者への処分の検討となります。処分については被害者の心理面、加害者が処分の妥当性について理解できるよう配慮した内容が望ましいようです。
最後に、再発防止に向けた取り組みが必要となりますが、ハラスメントに関連した研修会への従業員の参加促進や、啓発文書の周知徹底など具体的な活動が事業者に求められます。

松Dr.

   

アルコールによる健康障害

以前は「酒は百薬の長」といわれていました。しかしその後の研究から、一部のがん・高血圧・脳出血・脂質異常症などのリスクは飲酒量が増えれば増えるほど上昇するということがわかっています。脳梗塞、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患も、飲酒量が一定量以上になると高まるといわれています。不適切な飲酒は肝臓病や膵臓病の原因となり、アルコール依存症などメンタルヘルスへ影響する恐れがあります。
節度ある適度な飲酒量は、酒に含まれる純アルコール量により定められており、男性で20g/日、女性はこの1/3~1/2量(10g/日未満)となっています。純アルコール量20gの例として、ビール(5%)ロング缶1本、日本酒(15%)1合、焼酎(25%)100mLなどが挙げられます。純アルコール量はインターネットで調べることができるほか、一部の商品では飲料に含まれる純アルコール量の表示がありますので、目安にしていただけますと幸いです。
イベントなど限られたタイミングで多く飲酒する場合も、バランスの良い食事をとりながら、お酒の合間に水や炭酸水を飲むことを推奨します。上手にお酒と付き合い楽しみましょう。

額田Dr.

   

咳喘息とは?

咳喘息は「咳だけが長引く」喘息の一種で、通常の喘息に見られるゼーゼーした音や息苦しさがなく、咳だけが3週間以上続くことが特徴です。
特に夜間や明け方に悪化しやすく、冷たい空気や花粉・ストレス・運動・タバコの煙・香水など、さまざまな要因が引き金になりやすいです。風邪をきっかけに発症することも多いですが、生活環境や気温の変化も影響するため日常的に注意が必要です。
またホクナリンテープは、気管支を広げて呼吸を楽にするための薬で咳止めとは異なりますが、気管支の過敏さを和らげる効果があり、これが効く場合は咳喘息の可能性が高いと考えられます。
咳喘息は放置すると約30~40%の確率で典型的な気管支喘息に進行し重症化すれば呼吸不全のリスクもあります。ですが、吸入ステロイドを用いることで進行を抑え、症状を改善できることが知られています。
咳が長引き、特に夜や早朝に悪化する場合は、咳喘息の可能性を考慮し早めに医療機関で相談することをお勧めします。

山本Dr.

   

HIV感染症について

HIV感染症は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染することにより免疫機能が徐々に低下していく病気です。感染するとすぐに症状が出るわけではなく、治療しない場合も無症状の期間が続きます。この間もウイルスは体内で増殖し、他者に感染させる可能性があります。
そして、さらに進行すると免疫が極度に落ちてしまい、AIDS(後天性免疫不全症候群)の発症につながることになります。
HIVは血液・精液・膣分泌液・母乳などを通じて感染しますが、日常生活での接触(握手・食器の共有・咳やくしゃみなど)では感染しません。
治療薬は日々進歩していて、薬が開発されたばかりの頃は1日に複数回何錠も飲む必要がありましたが、今では1日1回1錠飲むだけでよいものも発売されています。
そして、治療が進歩するにつれ性交渉による感染についても“U=U”というメッセージが提唱されるようになりました。これは“血液中のHIVの量が検出感度未満(Undetectable)に抑えられている期間が半年以上続けば、性行為によって他者に感染することはない(Untransmittable)”というメッセージです。すなわち、適切な治療を受けることで感染拡大のリスクをほぼゼロにすることができるというもので、寿命も一般の人と変わらないといわれています。
重要なのは早期発見と治療です。HIV検査は匿名で受けられる施設も多く、感染の有無が気になる場合は積極的に検査を受けることが重要です。また、正しい知識を持ち偏見や差別をなくすことが感染拡大の防止につながります。

本行Dr.

   

産業医通信2024-12

医療法人朋愛会 健診事業部 06-6232-0550 ホームページ